2015年の3月に5年の任期を終えてウルグアイの大統領を退任した、ホセ・ムヒカさんをご存知でしょうか?日本ではそれほど有名ではありませんが、彼は別名「世界一貧しい大統領」として世界的に有名な人物です。
大統領になってもそれまで住んでいた農場に住み続け、大統領車も使わずに87年生のフォルクスワーゲン・ビートルを自ら運転し、井戸水を引いての生活のため生活費は月に約1,000ドル。
「国民の多数派と同じ生活をしているだけ」と言ってその生活スタイルを変えなかったムヒカさんを一躍有名にしたのは、2012年の6月にブラジルのリオで開催された国連の会議でした。
その会議のスピーチでムヒカ大統領は世界中の人々の感動を集め、一躍時の人となったのです。
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世界一貧しい大統領の国連スピーチ動画
私がムヒカ大統領のスピーチを知ったのは最近で、こちらの本を通じてだったのですが、幸いYouTubeに日本語字幕付きの動画がアップされていましたので、そちらをご紹介したいと思います。日本語動画付です。
いかがでしたか?
私はこのスピーチ動画を初めて見た時、まるで映画のワンシーンのように感じました。
口調も自然体で仰々しくなく、まるで子供にも分かるような分かりやすい説明で、しかもかなり本質をついている内容です。
環境問題と経済発展の両立という、人類がこれから真剣に考えざるを得ない問題に対して、根本的な価値観を変えない限り解決はないということをスピーチの中ではっきりと言っています。
私にとって印象的だったのは、貧困国や貧困層が富裕国や富裕層と全く同じ消費と発展を実現できれば貧困は無くなるものの、それは現実的な地球の資源を考えると不可能だと言っていた点です。これは確かにその通りで、これまで裕福な暮らしができなかった国や層が裕福な暮らしが出来るほどの経済力を身に付けた先には、資源の奪い合いの戦争が待っていると思います。
ではどうすればいいのかということにもムヒカ大統領は言及しているのですが、こういった幸福論を国連の会議で話す大統領はこれまで皆無でしたよね。多くの首脳が無難な建前論を述べる中、とつとつと分かりやすい言葉で本質を突いた内容のスピーチだったからこそ、多くの人の共感と感動を得たのだと感じました。
世界一貧しい大統領のスピーチが日本人の心に響く理由
ちなみに、このスピーチがされたのは2012年なのですが、日本国内では当時それほど話題になりませんでしたよね。世界的には非常に有名なスピーチであるにもかかわらず、なぜか日本ではそこまで知名度は高くありませんでした。
かといって、ムヒカ大統領のスピーチ内容が日本人の心に響かないかというと決してそうではありません。
むしろ、スピーチの中でムヒカ大統領が「本来の幸福と何か?」という点で触れた内容は、日本人が本来美徳とし、そして現在忘れかけている価値観に訴えかけてきます。
こちらの本の中でスピーチを日本語に訳した内村明さんもおっしゃっていますが、「足るを知る」「質素」という日本人の価値観とムヒカ大統領のスピーチにはとても深い共通点があるように思えます。
世界でもっとも貧しい大統領ホセ・ムヒカの言葉 [ ホセ・ムヒカ ]
スピーチ内容だけでなく、彼の人柄や生活スタイル、エピソードなどを知れば、より親近感と共感を感じられると思いますよ^^
ムヒカさんの人側が分かる名言集
実は、国連のスピーチでムヒカ大統領が注目されたときは、まだ世界一貧しい大統領とは呼ばれていませんでした。世界一貧しい大統領というのは、その後の海外TV局の取材で彼の生活スタイルが公開された際に、驚きとともにつけられたニックネームです。
そこからさらにムヒカ大統領は世界のマスコミから注目を集め、多くのコメント・名言を残しています。
それらを聞くと、ムヒカ大統領の幸福感・人生哲学と政治家としての哲学にブレが全くないことに気が付きます。ここまで一貫性を持った生き方ってなかなかできないので、それだけでも驚嘆に値すると思います。
そんな名言の中から、個人的に響いたものをいくつかご紹介したいと思います。
貧乏とは、欲が多すぎて満足できない人のことです。
人が物を買う時は、お金で買ってはいない。そのお金を貯めるために割いた人生の時間で買っているのです。
お金があまりに好きな人は、政治の世界から出ていってもらう必要があります。
敗北者とは、闘いを辞めた人のこと。人間は強い生き物であり、多くのことを乗り越えられます。
壁を作ることで、国民は政治から離れていきます。もっとも良くないことは、国民から政治が嫌われること。そうなると、政治は失敗に終わります。
人生ではいろいろなことで何千回と転びます。でも、千と一回立ち上がり、一からやり直す力が、あなたにはあります。
最後に
ムヒカさんはスピーチや名言だけでなく、彼の人柄や哲学を表す多くのエピソードを残しています。
- 大統領官邸で生活することを税金の無駄として自宅の農場生活し、
- 自宅の警備も国民の壁になると警官を2人だけしかつけず、
- 移動する際は大統領専用車を利用せずに愛車を運転し、
- ヒッチハイクをしている人がいれば自分が運転する車にのせ、
- 海外への出張は飛行機のエコノミークラスを利用し、
- 国際会議では他国の大統領専用機に便乗させてもらう。
大多数の国民の生活レベルに合わせ、大統領官邸を維持する予算があれば学校をひとつ運営できるとする政治哲学で、多くの国民の支持を集めたまま任期を終えました。
彼が行った斬新な政策(大麻の保有・使用・栽培の合法化や中絶の合法化など)には賛否両論がありましたが、国民に寄り添うという姿勢こそが最後まで多くの支持を集めた要因だったのではないかという印象を受けました。
海外出張で5000万以上の税金を使い、「トップが二流のビジネスホテルに泊まるなんて恥ずかしいでしょ?」という言葉を残す知事とは、見事に正反対ですよね。