本人の自覚症状がないままに進行し、日本人成人の8人に1人が該当するという慢性腎臓病(CKD)。具体的にどのような基準で分類され、どういった症状が出るのかという点については、こちらの記事でまとめました。
⇒慢性腎臓病(CKD)とは?ステージ表の見方と現れる症状をチェック!
今回は、慢性腎臓病(CKD)を引き起こす原因となる疾患や、実際の治療法、食事で気を付けたいポイントについてまとめています。
ご自身の腎臓の値に不安がある場合はもちろん、ご家族が慢性腎臓病と診断された場合にも参考にしていただければと思います。
目次
慢性腎臓病(CKD)の原因となる疾患
慢性腎臓病(CKD)とは、一つの疾患のことを表す言葉ではなく、様々な疾患が原因で腎臓の機能が低下してしまった状態を表す言葉です。では具体的にどんな疾患で腎臓の機能が低下するのでしょうか?
慢性腎臓病の原因になりやすい疾患は以下の通りです。
ここまでが、透析が必要となるまで症状が進んでしまう慢性腎臓病の原因疾患のベスト3です。糖尿病・高血圧といった疾患が腎臓にも大きな影響を与えていることが分かりますね。
その他には、以下の様な腎臓疾患も慢性腎臓病の原因になります。
慢性腎臓病(CKD)の治療はどう行われるの?
慢性腎臓病と診断された場合はそれ以上進行させないための治療を行う必要がありますが、具体的にどのような治療を行うのでしょうか?
上記で取り上げた、透析まで進みやすい3つの疾患に絞って治療法に触れていきたいと思います。
糖尿病性腎炎の治療法
糖尿病性腎炎は、血糖値のコントロールがうまくできない状態が続くことで起こります。ですので、このケースでは血糖値をいかにコントロールするかがポイントとなります。
具体的には、食事・運動・投薬の3点から治療を進めていきます。
糖尿病だから食べてはいけないというものはありませんので、腹八分目を心がけながら野菜を中心とした栄養バランスのよい食事を心がけましょう。ただし、腎機能の低下が進んでたんぱく尿が多く出ている場合は、たんぱく質を制限していく必要があります。
ただし、やはり腎機能の低下が進行してむくみがひどい場合や大量のたんぱく尿が出ている場合、あるいは血糖値が非常に高い状態の時は運動は控えます。
経口糖尿病治療薬としてよく用いられるのは、
- DPP-4阻害薬
- α-グルコシダーゼ阻害薬
などです。DPP-4阻害薬は血糖値をコントロールするホルモンに働きかけ、α-グルコシダーゼ阻害薬に関してはブドウ糖の吸収を遅らせて血糖値の急上昇を防ぐ働きがあります。
慢性腎炎(慢性糸球体腎炎)の治療法
慢性腎炎(慢性糸球体腎炎)は、実は単一の病気を指す言葉ではなく、異常が見られる部位によっていくつかの種類に分けられます。(IgA腎症、膜性腎症、微小変化型(ネフローゼ)など)
いずれにしても、糖尿や高血圧といった他の疾患がないのにたんぱく尿や血尿が1年以上続いている状態が慢性腎炎(慢性糸球体腎炎)です。
- 塩分
- たんぱく質
の制限がなされます。制限度合いは、症状の進行度合いによって異なります。
状態によっては副腎皮質ステロイド薬を点滴したり、扁桃の摘出が検討されます。
腎硬化症の治療法
腎硬化症は高血圧が続くことで起こる状態で、糸球体の毛細血管がダメージを受け、動脈硬化も進行しています。ですので、この状態の時は血圧を正常にコントロールすることが第一優先とされます。
- 塩分
- 動物性脂肪
- お酒
- タバコ
そのうえで、ウォーキングなどの適度な運動を行うことが推奨されています。
RAS阻害薬にはACE阻害薬とARB阻害薬がありますが、いずれも血管を拡張して血圧を下げる薬です。すべてのステージで使用が可能で、副作用が出ない限り使い続けることができる薬です。
RAS阻害薬以外で使用される降圧剤は、以下の2つです。
- 心血管疾患のリスクがある場合⇒カルシウム拮抗薬
- むくみが見られる場合⇒利尿薬
以上の薬や食事をはじめとする生活習慣を改善することで、130/80㎜Hg以下の血圧を目指します。
慢性腎臓病(CKD)の食事で気を付けたいポイント
慢性腎臓病(CKD)を進行させないためには、薬に頼るだけでなく食事を改善することも欠かすことのできないポイントです。
慢性腎臓病の食事制限で気を付けたい大きなポイントは以下の2点です。
- たんぱく質摂取量の制限
- 塩分の摂取量の制限
厳密には、たんぱく質と塩分以外にもカリウム・リンの制限も大切になります。
カリウムは野菜を茹でる、生野菜を可能な限り細切りすることでだいぶ減らすことが可能ですし、リンはたんぱく質を多く含む食品に一緒に含まれていることが多いため、たんぱく質を制限する食事が出来れば自然と減らせると思います。
メインはたんぱく質と塩分ですので、ここからはそれぞれについて掘り下げていきたいと思います。
たんぱく質摂取量の制限
たんぱく質は、炭水化物・脂質と並んぶ3大エネルギーの一つで体に欠かせない大切な栄養素ですが、実はこの中でたんぱく質だけが窒素を含むため、体内の代謝によって窒素化合物を生成してしまいます。
この窒素化合物は腎臓でろ過されて体外に排出されるのですが、量が多くなるほど腎臓に負担がかかってしまうため、腎機能が低下した場合はたんぱく質を制限する必要が出てくるのです。
具体的には、以下の基準を意識してください。
- ステージG1・G2⇒過剰にならないよう注意すればOK
- ステージG3 ⇒標準体重1kgあたり0.8~1.0kg/日
- ステージG4・G5⇒標準体重1kgあたり0.6~0.8kg/日
たんぱく質は肉や魚、卵といった食品に多く含まれるため、これらの食品を今までの6~7割程度に抑えるだけでかなりの制限が可能です。
ただし、たんぱく質を制限することで摂取エネルギー不足が生じてしまうと筋力不足や免疫力の低下といった状態にもなりやすいため、不足した分は炭水化物などで補う必要があります。※糖尿病を併発している場合は、血糖値が急上昇しないよう、医師や栄養士さんに相談してください。
塩分の摂取量の制限
塩分を制限する理由は、高血圧を防止するためです。高血圧になると腎臓の毛細血管に負担がかかって腎機能の低下を引き起こしますが、腎臓の機能が低下すると血圧を調整するホルモン分泌もうまくいかなくなるため、さらに高血圧が進んでしまうという悪循環に陥ります。
この悪循環を断ち切るためにも、食事での塩分の摂り過ぎには制限をかける必要があります。具体的に意識したい数字は以下の通り。
- 3~6g/日(状態によって幅はあり)
塩分の代わりにお酢や天然だし、香辛料などをうまく使って味を工夫したり、麺類のスープは飲まない、醤油はかけるのはなくつける、といった食べ方の工夫をすることで無理なく減塩が可能です。
また、加工食品は味付けが濃いものが多く、塩分の量も多いので極力避けるようにしましょう。
食事療法用宅配サービスを上手に活用する
たんぱく質・塩分を中心に、カリウムやリンといった栄養素が制限された食事の要領が分かるまでは、たんぱく質と塩分があらかじめ調整されている食事療法用宅配サービスを利用するのも一つの方法です。
1食あたりの金額もそこまで高額ではありませんので、
- 3食のうち1食分はそういったサービスを利用する
- 1週間~1か月ほど継続してみて、実際にたんぱく・塩分が調整された食事を体感し、自炊に活かす
といった感じで、柔軟に試してみるといいです。調理済みで電子レンジで温めるだけなので、手間もかかりません。
7食分から送料無料!自宅で食事制限可能な宅配弁当
まとめ
慢性腎臓病(CKD)は急性の病気と異なり、基本的に完治を目指せるものではありません。進行させないためにも、薬を用いた治療と並行して食事をはじめとした生活習慣の改善に取り組んでいきましょう。
慢性腎臓病のステージごとの症状や検査などについてはこちらの記事でまとめています。もしかして自分も?と心配な方は、チェックしてみてください。